世界の真実に近づくための
エマニュエル・トッド入門講座

And all must love the human form,
In heathen, Turk, or Jew;
Where Mercy, Love, and Pity dwell,
There God is dwelling, too.

だから、みな人間のかたちをしたものを愛そう
異教徒、トルコ人、ユダヤ人
彼らのうちには慈悲、愛、憐れみが宿り、
神もまた宿っている


William Blake, The Divine Image, 1789から抜粋
トッド『シャルリとは誰か?』(文春新書、2016)冒頭で引用(訳は辰井)

最近の記事

トッド入門の入門(初めての方に)

本講座はトッドの人類学理論に忠誠を誓っていますが、理論を用いて世界を解釈する仕方には、トッド本人と異なる点があります。この記事の冒頭に違いをまとめましたので、気になる方はご一読ください。

トッド入門講座

予告編 : トッドの理論はなぜ
「それほどよく知られていない」のか

はじめまして。そうでない方には、こんにちは。辰井聡子といいます。社会科学の研究者です。 この度、web上でエマニュエル・トッド入門講座を開講することにしました。どうぞよろしくお願いします。 この記事は予告編です。講座の趣 […]

独自研究

生き心地の良い町
-核家族の日本-

「生き心地の良い町」海部町 徳島県に海部町という場所がある(あった)のをご存じだろうか。自治体の合併で現在は徳島県海部郡海陽町の一部となっているが、その中の元「海部町」だった地域のことである(以下単に「海部町」と呼ばせて […]

京都−核家族の都?

  私は、東京下町の出身なので(?)京都という町にはあまりよい印象を抱いていなかった。古都といっても実際には車がガンガン走る近代的な大都会だし「むかし天皇が住んでいたというだけじゃないか」「権威主義」などと思ったりしてい […]

自殺と他殺
ー権威の作用ー

  はじめに トッドは自殺率と他殺率が「反比例する相関関係」にあることを指摘している(『世界の多様性』182頁)。要するに、概して言うと、自殺率が高いところは他殺率が低く、他殺率が高いところは自殺率が低いということだ(下 […]

家族システムとイデオロギーの再解釈

フランス人トッドと日本人の私ー平等マニアと権威マニア トッドはフランスの平等主義核家族地域出身である。「平等」という価値が具体的にどのような形で社会で作用しているのかを肌で理解しているためなのだろう。私から見ると、トッド […]

連載「社会のしくみ」のご案内

  姉妹サイトsatokotatsui.comの方で、連載「社会のしくみ」をはじめました。 トッドの人類学を頭に入れると、国家の誕生、国家の意思決定システム(政治ですね)、政治と宗教の関係、世界情勢‥など、さまざまなこと […]

キューバの謎

キューバは、外婚制共同体家族グループの一員である。ロシア、イタリア中部、中国、ベトナム(の一部)と、見事に共産圏(イタリア中部は共産党が非常に強かった)の地図と重なり、トッドに「家族システムとイデオロギーの相関性」に関す […]

ロシアとウクライナのこと

  はじめに ー 家族システムの理論が教えること 神よ 変えることのできるものについて、 それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。 変えることのできないものについては、 それを受けいれるだけの冷静さを与えた […]

デモ指数:カナダ反ワクチン義務化デモに見る家族システムとデモ

  カナダのトラック運転手による反ワクチン義務化デモは1Freedom Convoy 2020 と呼ぶらしい。1月15日に(アメリカからの)再入国時のワクチンパスポート提示が義務化されたことに抗議して始まった。裁判所の解 […]

内婚と外婚ー日本と韓国

内婚と外婚 エマニュエル・トッドが家族システムの分析に使う変数の一つに「内婚と外婚」というのがある。 近親婚(いとこ婚)を許容するのが「内婚」、許容しないのが「外婚」だが、キリスト教が近親婚を禁じているので、ヨーロッパに […]

トッド用語事典

原初的核家族

家族システムは文明とともに分化(differentiation)(進化といってもよい)を始め、多様性を獲得していくが、トッド(や、おそらくかなり人類学一般)によると、進化が始まる以前には、一つの単純なシステム(柔軟な核家 […]

乳児死亡率

エマニュエル・トッドは人口動態のデータを用いて社会の内側を透視します。なかでも彼が特に重く見ている指標が乳児死亡率です。 1 乳児死亡率とは 乳児死亡率(infant mortality rate)とは、生まれた子どもが […]

移行期危機

  1 移行期危機とは 移行期危機とは、社会が前近代から近代に移行する際に発生する危機的現象のことを指す用語です。 トッドの理論では、近代化の引き金を引くのは識字化です。男性の半数以上が識字化し、物を考え、社会に参加する […]

トッド後の社会科事典

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学問(近代)

識字化が進み、天上の王国(キリスト教)を信じることができなくなった心(集合的メンタリティ)が、観念の世界に築き上げた王国。 *王の座に君臨するのは「客観的真実」。 宗教(一神教)が(家族システムにおける)権威の代替物とし […]

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宗教(一神教)

(家族システムが未分化であるために)地上で国家を生成する能力を欠く原初的核家族が天上に作り上げた王国。 唯一絶対の神は、家族システム(=集合的メンタリティ)における権威の代替物として機能し、原初的核家族や絶対核家族が国家 […]

おかね(付・資本主義経済)

財やサービスの交換の際の決済手段。形(トークン、粘土版に刻んだ印、帳簿上の数字など)にかかわらず、市場において決済に使用できる媒体はおかねである。 おかねの機能 おかねの基本的な機能は、財の流通の促進・容易化である。原初 […]

近代

ヨーロッパが世界の中心に躍り出て覇権を握った時代のこと(概ね16世紀ー現代)。 近代より前、文明の進歩は社会の絆(家族システム)の革新とともにあった。家族システムの進歩とは無縁であったヨーロッパが突如文明の中心地となった […]

幸せ(幸福)

社会を構成する一人ひとりに自らの人生を司るものとして与えられた規範。「正しさ」とセットで社会の構築・維持のために機能する。 「正しさ」と同様、社会の精神的絆(家族システム)の在り方によって基準や深度が異なる傾向にある。 […]

正しさ(正義)

人間が、精神的な絆(社会)を構築・維持するために作り出した観念。自然界には存在しない。 人類の社会化(約70000年前)と同時に誕生したと推測されるが、社会の複雑化 ≒ 国家の成立とともに、がぜん大きな役割を担うようにな […]

社会

人間が営む共同体。自然や外敵からの防衛、食糧の確保、老いや病・出産育児の際の生活支援(相互扶助)を主目的とする点は他の動物の群れと同じだが、精妙な精神的(感情的・霊的・知的)紐帯で結ばれている点に特徴がある。 本サイトの […]

人間

比較的貧弱な身体能力にかかわらず地球上の食物連鎖のトップに君臨する生物。他の生物と同様に自然界(宇宙)に存在するが、発達した大脳機能を駆使して脳内に「社会」という疑似的な宇宙(宇宙内宇宙)を作り上げ、主としてその中で生活 […]