世界の真実に近づくための
エマニュエル・トッド入門講座

And all must love the human form,
In heathen, Turk, or Jew;
Where Mercy, Love, and Pity dwell,
There God is dwelling, too.

だから、みな人間のかたちをしたものを愛そう
異教徒、トルコ人、ユダヤ人
彼らのうちには慈悲、愛、憐れみが宿り、
神もまた宿っている


William Blake, The Divine Image, 1789から抜粋
トッド『シャルリとは誰か?』(文春新書、2016)冒頭で引用(訳は辰井)

最近の記事

トッド入門の入門(初めての方に)

トッド入門講座

家族システムの変遷
-国家とイデオロギーの世界史-
(4)「識字化した核家族」の時代

西欧の家族システム (1)核家族と直系家族の二種類 ユーラシア大陸の中央部の家族システムが「核家族→直系家族→外婚制共同体家族→内婚制共同体家族」へと発展を遂げていた頃、西ヨーロッパはどんな状態であったのでしょうか。 拡 […]

家族システムの変遷
-国家とイデオロギーの世界史-
(3)内婚制共同体家族とオスマン帝国

「アラブ式内婚」という革新 ユーラシア大陸中央部では、メソ紀1000年(前2300年)頃のアッカド帝国以降、バビロニア(バビロン第一王朝)、新アッシリア帝国、アケメネス朝ペルシャなど、多数の「帝国」が生まれました。 ロー […]

家族システムの変遷
-国家とイデオロギーの世界史-
(2)都市国家から「帝国」まで

都市文明のはじまり 「補講 気候と人類」に、最終氷期が終わり間氷期(温暖で安定)に入った頃に農耕が始まったこと(約12000-11000年前)、巨大氷床の融解による海水面の上昇が終わったことで、長期の定住が可能になったこ […]

家族システムの変遷-国家とイデオロギーの世界史 (1)-2 中国の事例 

  はじめに この講座では、次回以降、ユーラシア大陸の西の中心(中東)とその周辺を舞台に、家族システムの変遷を見ていくのですが、その予行演習として最適なのが、中国の事例です。 中国では、中東と全く同様に、「原初的核家族→ […]

家族システムの変遷
-国家とイデオロギーの世界史-
(1)イントロダクション

  はじめに (1)家族システムは「進化」する 家族システムは変化します。しかし、人類が自分の意思で変えられるかというと、変えられない。私たちにできるのは、基本的に、知ること、理解することだけです。 家族システムの変遷は […]

家族システムについてのよくある誤解

  *この文章は、家族システムの概念に関する「やや立ち入った解説」です。概要についてはこちらをご覧ください。 「家族システムとは?」 家族システムの分析は、20世紀初頭から、非西欧、非先進社会の成り立ちを知るための人類学 […]

エマニュエル・トッドの道具箱
ー家族システム、教育、人口動態

はじめに エマニュエル・トッドは1976年の著書でソ連崩壊(1991年)を予言して、その名を世に知られるようになりました。 予言はその後も続き、2007年の著書では「アラブの春」(2009年~)を、2014年のインタビュ […]

 「異端認定」がもたらしたもの ー 若者の楽観から歴史家の楽観へ

  世の中から受けた攻撃について、トッドは、率直に、まだ何も成し遂げていない若い研究者だった自分にとっては、「かなり辛いこと」だったと述べています(『問題は英国ではない、EUなのだ』95-97頁)。 「いったいこの本が何 […]

トッドとマルクス

  「トッド・クロニクル(1)」の最後で「マルクスのように」という比喩を使ったのは、トッドには「次代のマルクス」的な面が大いにあるからです。学説は(ある意味では)正反対ですし、トッドは活動家ではない。しかし、二人が歴史( […]

トッド・クロニクル(2)ー大発見とその後

発見前夜 ー 経済中心思想との決別 (1979) 1976年の『最後の転落』の後、トッドは、「ル・モンド」の記者として歴史関係の書評やインタビューなどをこなしながら(『トッド 自身を語る』26頁等)、自由に研究を続けてい […]

トッド・クロニクル(1) 1951ー1976 ー修業時代のトッドー

エマニュエル・トッドは、不思議な研究者です。歴史家、歴史人口学者、家族人類学者などいろいろな肩書きがあって、権威ある出版社から何冊も学術書を出している著名な研究者なのに、大学に所属していない。 同じ知識人でも、思想家やジ […]

補講 気候と人類

さて、この2回の講義で、無事人類は狩猟採集を始め、世界史の教科書に載るところ、トッドの理論の守備範囲にまでたどり着きました。この先の人類史はトッドにお任せすることにして、最後に一つだけ補足です。 現在、私たちの大きな関心 […]

独自研究

生き心地の良い町
-核家族の日本-

「生き心地の良い町」海部町 徳島県に海部町という場所がある(あった)のをご存じだろうか。自治体の合併で現在は徳島県海部郡海陽町の一部となっているが、その中の元「海部町」だった地域のことである(以下単に「海部町」と呼ばせて […]

京都−核家族の都?

  私は、東京下町の出身なので(?)京都という町にはあまりよい印象を抱いていなかった。古都といっても実際には車がガンガン走る近代的な大都会だし「むかし天皇が住んでいたというだけじゃないか」「権威主義」などと思ったりしてい […]

自殺と他殺
ー権威の作用ー

  はじめに トッドは自殺率と他殺率が「反比例する相関関係」にあることを指摘している(『世界の多様性』182頁)。要するに、概して言うと、自殺率が高いところは他殺率が低く、他殺率が高いところは自殺率が低いということだ(下 […]

家族システムとイデオロギーの再解釈

フランス人トッドと日本人の私ー平等マニアと権威マニア トッドはフランスの平等主義核家族地域出身である。「平等」という価値が具体的にどのような形で社会で作用しているのかを肌で理解しているためなのだろう。私から見ると、トッド […]

連載「社会のしくみ」のご案内

  姉妹サイトsatokotatsui.comの方で、連載「社会のしくみ」をはじめました。 トッドの人類学を頭に入れると、国家の誕生、国家の意思決定システム(政治ですね)、政治と宗教の関係、世界情勢‥など、さまざまなこと […]

キューバの謎

キューバは、外婚制共同体家族グループの一員である。ロシア、イタリア中部、中国、ベトナム(の一部)と、見事に共産圏(イタリア中部は共産党が非常に強かった)の地図と重なり、トッドに「家族システムとイデオロギーの相関性」に関す […]

ロシアとウクライナのこと

  はじめに ー 家族システムの理論が教えること 神よ 変えることのできるものについて、 それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。 変えることのできないものについては、 それを受けいれるだけの冷静さを与えた […]

デモ指数:カナダ反ワクチン義務化デモに見る家族システムとデモ

  カナダのトラック運転手による反ワクチン義務化デモは1Freedom Convoy 2020 と呼ぶらしい。1月15日に(アメリカからの)再入国時のワクチンパスポート提示が義務化されたことに抗議して始まった。裁判所の解 […]

内婚と外婚ー日本と韓国

内婚と外婚 エマニュエル・トッドが家族システムの分析に使う変数の一つに「内婚と外婚」というのがある。 近親婚(いとこ婚)を許容するのが「内婚」、許容しないのが「外婚」だが、キリスト教が近親婚を禁じているので、ヨーロッパに […]

トッド用語事典

乳児死亡率

エマニュエル・トッドは人口動態のデータを用いて社会の内側を透視します。なかでも彼が特に重く見ている指標が乳児死亡率です。 1 乳児死亡率とは 乳児死亡率(infant mortality rate)とは、生まれた子どもが […]

移行期危機

  1 移行期危機とは 移行期危機とは、社会が前近代から近代に移行する際に発生する危機的現象のことを指す用語です。 トッドの理論では、近代化の引き金を引くのは識字化です。男性の半数以上が識字化し、物を考え、社会に参加する […]